離婚慰謝料が認められる場合、様々な事項を総合的に考慮して具体的な金額が定まりますが、通常の一般的な離婚事件では50万円から500万円程度となることが多いです。
1 離婚に関する慰謝料の種類
離婚時には、財産分与や親権者の決定、養育費の決定などとともに、慰謝料が請求されることが多くあります。離婚時の慰謝料は、民法上の不法行為に基づいて認められるものです(民法第709条、710条)。
離婚に関する慰謝料は、厳密には、離婚原因についての慰謝料と、離婚自体についての慰謝料の2種類に分かれます。前者は、不貞行為やDVなど、離婚原因となった不法行為による精神的苦痛に対する慰謝料です。後者は、離婚によって配偶者の地位を失うことになることによって生じた精神的苦痛に対する慰謝料です。
2 慰謝料が認められる場合
夫婦は、お互いに平穏かつ円満な共同生活を送る権利が保障されています。そのため、配偶者が不貞行為をしたことは、離婚事由の一つとされています(民法第770条第1項第1号)。そして、不貞行為によって、平穏かつ円滑な共同生活を送る権利が侵害されたとして、慰謝料を請求することができます。
DV(ドメスティックバイオレンス・家庭内暴力)は、夫婦の一方が他方に対して行う暴力的行為のことをいいます。また、収入のある夫婦の一方が、収入のない他方に対して不当に生活費を渡さないというような場合には、経済的DVと認定されるケースもあります。加えて、モラハラ(モラルハラスメント)は、言動などによって相手方を精神的に貶めることをいいます。
このような場合においては、相手方に対して身体的または精神的な被害を与えるものですので、不法行為が成立し、慰謝料を請求できます。
夫婦には、法律上、お互いに同居義務、扶助義務、婚姻費用分担義務を負っています(民法第752条)。正当な理由なく、当該義務に反した場合には、悪意の遺棄として離婚事由にあたるとともに(民法第770条第1項第2号)、慰謝料を請求できるケースがあります。
3.慰謝料の相場金額
離婚に関する慰謝料の金額については、一定の基準があるわけではなく、個々の案件ごとに総合的に判断されます。その際によく考慮されるのは、婚姻期間の長さ、子どもの有無・人数・年齢、離婚事由となった事実の具体的な内容などです。
ここでいう離婚事由となった事実の具体的な内容とは、例えば、不貞行為であれば、不貞行為の回数や期間、不貞行為に至った経緯などであり、DVであれば、DVの態様、被害の程度、DVを受けた期間などです。
上記のような事項を含めた全体的な状況を考慮した上で、実際の事案では、離婚に関する慰謝料は、50万円程度から500万円程度となることが多いです。
もちろん、慰謝料の支払義務を負う方に多額の資産や収入がある場合、相手方に離婚事由が認められないにもかかわらず離婚を求める場合など、上記以上の金額の慰謝料となるケースもあります。
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弁護士 金紀彦