被相続人が韓国国籍で亡くなり、遺言もない場合、韓国法における法定相続人の範囲や法定相続分は、日本法のものと違いがあるので注意が必要です。
1.法定相続人と法定相続分とは
法定相続人とは、被相続人の遺産を相続できる相続人として法律で定められた人のことをいいます。また、法定相続分とは、被相続人の遺産を相続するにあたって、各法定相続人が取り分として法律上定められている割合をいいます。
被相続人が生前に遺言を残していれば、原則として、遺言にしたがった範囲の方が相続人となり、遺言に記載された内容や割合で遺産を相続します。ただし、遺留分などの制度があることに注意が必要です。
一方、遺言がなされていない場合には、法定相続人が、法律で定められた割合で被相続人の遺産を相続することになります。
2.韓国における法定相続人の範囲
被相続人が韓国国籍で亡くなり、遺言で相続準拠法の指定がなされていない場合、法定相続人の範囲や法定相続分について、韓国法が適用されます(法の適用に関する通則法第36条)。
韓国民法において、配偶者は常に法定相続人になります(韓国民法第1003条第1項)。そして、以下の順位で相続人となるとされています(韓国民法第1001条)。
①被相続人の直系卑属
②被相続人の直系尊属
③被相続人の兄弟姉妹
④被相続人の4親等内の傍系血族(おじ、おば、甥、姪、いとこ等)
ただし、被相続人の配偶者がいる場合には、③④は相続人となりません(韓国民法第1003条1項)。
相続放棄をした相続人は最初から相続人とならず、また、相続放棄をした者の子や孫が代襲相続をしない点は、日本の法律と同じです。しかしながら、第一順位の法定相続人について、日本民法では子と定められていますが(日本民法第887条)、韓国民法では直1卑属と定められています(韓国民法第1001条第1項)。そのため、韓国民法においては、子が全員、相続放棄をした場合には、孫が相続人となります。
また、被相続人より先に死亡した相続人や相続欠格となった相続人がいる場合、その配偶者は、子と共同で代襲相続します(韓国民法第1003条第2項)。
3.韓国における法定相続分
韓国民法において、配偶者の法定相続分は、直系卑属または直系尊属と共同で相続する場合には、それらの一人の者の1.5倍とされています(韓国民法1009条第2項)。
したがって、配偶者と子1名が相続する場合、日本法(配偶者:1/2、子:1/2)よりも、韓国法(配偶者:3/5、子:2/5)の方が配偶者の相続分が多くなります。一方、配偶者と子供2名が相続する場合、日本法(配偶者:1/2、子:1/4ずつ)よりも、韓国法(配偶者:3/7、子:2/7ずつ)の方が配偶者の相続分が少なくなります。
4.まとめ
以上のように、日本法と韓国法では、法定相続分の範囲や相続分についてすら、違いがあります。もちろん、これ以外にも多くの違いがありますので、韓国国籍で亡くなった方の相続を考える場合には、注意する必要があります。
弊所には、韓国法に基づく相続手続について知識経験が豊富な弁護士が多く所属しています。ご不明な点がございましたら、遠慮なく、ご連絡下さい。
弁護士 金紀彦