弁護士 金紀彦
判決は、自国内においてのみ効力が認められ、外国においては効力を有しないのが原則です。これは、司法権が国家権力の一つであり、各国家が個別に行使することになっているからです。一方で、他国の裁判所が審理を尽くして下した確定判決について、その効力を認めず、自国であらためて裁判を行わなければならないとすると、当事者に無用な負担を負わせることになります。また、同一の法律関係について国家間で異なる判断がなされると、法秩序の安定が崩れてしまいます。もっとも、自国において外国判決の効力を認めるためには、当事者に正当な防御の機会が保障されている点や自国の法秩序に照らして受入可能である点などが必要になります。
このような観点から、外国確定判決の承認手続が設けられています。日本においては、民事訴訟法第118条に規定されており、①外国裁判所の裁判権が認められること、②送達(公示送達を除く)を受け、または、応訴をしたこと、③判決の内容および訴訟手続が日本の公序良俗に反しないこと、④相互の保証があることのすべての要件を満たした場合には、外国確定裁判は日本国内でも効力が認められるとされています。一方、韓国においても、民事訴訟法第217条において、同様の規定が置かれています。
外国確定判決の承認判決を求めるのは、当該外国確定判決に基づいて、自国内の財産について強制執行をするケースが多いです。外国確定判決の承認判決を求めて訴えを提起すると、裁判所は、紛争の具体的な内容には踏み込まず、上記の要件を満たしているかを確認して、承認判決を出すかの判断をします。承認判決を得た後は、その効力をもって、自国内の財産に強制執行をすることができます。
日本と韓国の間では、送達がきちんとなされていれば、基本的に外国確定判決の承認判決を受けることができます。ただし、公示送達によって得られた判決の場合には、承認判決を得ることができませんので、注意が必要です。
日本と韓国にまたがる法律問題について裁判を申し立てる場合には、契約で合意管轄裁判所が決まっている場合等、どちらかの国の裁判所で裁判をやらなければならない場合を除き、送達の可否や裁判手続の負担、強制執行の要否などを考慮して、どちらの国の裁判所に裁判を申し立てるかを検討する必要があります。具体的には、公示送達以外の送達ができるのか、国際送達をすると3ヶ月から6ヶ月を要するが問題ないか、言語や裁判手続からしてどちらの裁判所が有利か、弁護士費用はどれくらいかかるか、強制執行が必要となるか等を考慮して、どちらの国の裁判所を選択するかを決定する必要があります。
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