弁護士 金紀彦
日本の民法が改正され、2022年4月から、成年年齢が18歳に引き下げられました(日本民法第4条)。一方、韓国においては、成年年齢は19歳です(韓国民法第4条)。この違いによって、日本にいる韓国国籍者について、①未成年者取消権がどのように取り扱われるか、②父母の親権に服するかの問題が生じます。
未成年取消権とは、未成年者が法定代理人(例えば親権者)の同意を得ずに結んだ契約は原則として取り消すことができるとするもので、日本の民法と韓国の民法で同じ内容が規定されています(日本民法第5条第2項、韓国民法第5条第2項)。これは、未成年者は、成年者と比べて取引の経験や知識が不足しており、判断能力も十分ではないため、未成年者の保護のために設けられている権利です。
未成年者取消権は、行為能力(単独で契約等の法律行為ができる能力)の問題であるところ、法の適用に関する通則法(以下「通則法」といいます)第4条は、第1項で「人の行為能力は、その本国法によって定める」としつつ、第2項において「法律行為をした者がその本国法によれば行為能力の制限を受けた者となるときであっても行為地法によれば行為能力者となるべきときは、当該法律行為の当時そのすべての当事者が法を同じくする地に在った場合に限り、当該法律行為をした者は、前項の規定にかかわらず、行為能力者とみなす」とされています。すなわち、日本にいる18歳の韓国国籍者が日本において行った法律行為について、その他の当事者も日本にいる場合には、韓国法によれば未成年ではありますが、未成年者取消権を行使できず、有効な法律行為として扱われることになります。
また、未成年者は、父母の親権に服することになります(日本民法第818条、韓国民法第909条)。この点、通則法第32条は「親子間の法律関係は、子の本国法が父又は母の本国法(父母の一方が死亡し、又は知れない場合にあっては、他の一方の本国法)と同一である場合には子の本国法により、その他の場合には子の常居所地法による」と規定しています。したがって、日本にいる韓国国籍者の場合、父又は母が韓国国籍者であれば、本国法である韓国法にしたがうことになります。したがって、日本にいる韓国国籍者のうち、父又は母も韓国籍者である者については、日本国籍者とは異なり、19歳になって初めて、父母の親権から離れることになります。もっとも、養育費については、大学卒業予定年齢まで支払うという合意をすることが一般的になっていますので、実際に影響が生じるケースは少ないように思います。
このように、日本と韓国において異なる規定がある場合に、いずれの法律を適用するかの問題が生じることがあります。当事務所には、日本と韓国との間の案件について豊富な知識および経験を有する弁護士が複数所属しています。法律相談が必要な場合には、お気軽に当事務所までご連絡下さい。