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モラルハラスメントは離婚原因になるのか

弁護士 金愛子

「モラルハラスメントがひどいので、離婚したい」という相談を受けることが増えました。しかし、そもそも、モラルハラスメントとはどういったものでしょうか。そして、モラルハラスメントは離婚原因になるのでしょうか。今回は、この2点について解説したいと思います。

 

1.モラルハラスメントとは

「モラルハラスメント」とは、もともと1998年にフランスの精神科医マリー=フランス・イルゴイエンヌ氏が提唱したものですが(『モラル・ハラスメント(Le harcèlement moral, la violence perverse au quotidien』)、本稿執筆現在、日本の裁判所は、「モラルハラスメント」という用語について、まだ定義を示しておりません。

一方、厚生労働省が運営するサイト「働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト『こころの耳』」では、職場における「モラルハラスメント」について「言葉や態度、身振りや文書などによって、働く人間の人格や尊厳を傷つけたり、肉体的、精神的に傷を負わせて、その人間が職場を辞めざるを得ない状況に追い込んだり、職場の雰囲気を悪くさせることをいいます。パワハラと同様に、うつ病などのメンタルヘルス不調の原因となることもあります。」と紹介されております。

したがって、夫婦間の「モラルハラスメント」とは、「言葉や態度、身振りなどで配偶者の人格や尊厳を傷つけたり、肉体的・精神的に傷を負わせること」、すなわち精神的暴力と考えることができます。実際に、内閣府男女共同参画局はドメスティックバイオレンスの概要を説明するサイトの中で、「暴力の形態」のうち精神的な暴力を「心無い言動等により、相手の心を傷つけるもの。」と定義しています。

 

2.モラルハラスメントの具体例

モラルハラスメントの具体例として、以下のようなものがあげられます。

・「誰のおかげで生活できてるんだ」「かいしょうなし」等の発言

・「結婚して損した」「外れくじをひいた」等の発言

・「黙れ、ばか」「そんなこともできないのか」「無能」等の発言

・大切にしていたものを壊したり、勝手に捨てたりする行動

・話しかけても無視するなどの行動

 

3.離婚原因になるのか

結論から申し上げますと、モラルハラスメントは民法770条1項5号「婚姻を継続しがたい重大な事由」として、離婚原因になると考えられます。

この「婚姻を継続しがたい重大な事由」とは、「婚姻関係が破綻し、回復の見込みがない状態」と解釈されています。したがって、人格を否定するような暴言や侮蔑的言動などの精神的な暴力(モラルハラスメント)によって、婚姻関係が破綻し、やり直しができない状態になったのであれば、離婚原因になります。

もっとも、離婚訴訟になった場合、モラルハラスメントによって婚姻関係が破綻したことを客観的に明らかにしなければなりません。

 

4.おわりに

「暴力をふるったわけではない」「言葉遣いが悪いだけ」「単なる夫婦喧嘩に過ぎない」という理由で、モラルハラスメントの被害者に対して「我慢が足りないだけ」と主張する人もいます。しかし、モラルハラスメントの被害者(もちろん、男女問いません)は目には見えない心の傷を負い、深刻な精神的ダメージを負っており、そのような主張が当てはまらないケースが多いのも事実です。

自分の配偶者の言動がモラルハラスメントになるのではないか、結婚生活の継続に不安を感じている方も多いと思います。

弊所には、離婚問題に精通した弁護士が男女ともに複数在籍しています。少しでも皆様の力になれればと思いますので、何かございましたらご相談ください。

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