弁護士 丁海煌
専門業務型裁量労働制についてご存知でしょうか?
専門業務型裁量労働制とは、業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務について、対象となる業務を労使で定め、労働者を実際にその業務に就かせた場合、労使であらかじめ定めた時間働いたものとみなす制度です。
制度自体は1987年から存したものの、コロナ禍によってテレワーク導入の検討をするにあたり、改めて注目されている制度です。
主な特徴は、時間配分などを含めた業務の進行状況などを労働者の管理に委ね、みなし労働時間を用いて労働時間の算定を行うことができる点です。
例えば、所定労働時間を「8時間」と規定しておくと、労働者が所定労働時間を超えて10時間働いたとしても、所定労働時間(8時間)に従事したものとみなされることになります(ただし、反対に実際の労働時間が6時間であったとしても、所定労働時間に従事したものとみなされます。)。
専門業務型裁量労働制のメリットは、①労働者がもっとも働きやすい形態で業務に取り組むことが可能で、労働者自身が計画を立てて業務を遂行することができるため、労働者自身のモチベーションアップにも繋がり、結果的に業務の効率性向上に資する点、②みなし労働時間を採用することで、ある程度労働時間に対して必要な経費をあらかじめ見積もることができるという点をあげることができます。
もっとも、専門業務型裁量労働制はいかなる業務についても定めることができるわけではありません。専門業務型裁量労働制を利用できる具体的な業務は労働基準法規則24条の2の2第2項に列挙されており、①新商品・新技術等の研究開発、人文・自然科学の研究、②情報処理システムの分析・設計、③新聞・出版の記事の取材・編集、放送番組制作のための取材・制作、④衣服・室内装飾・工業製品・広告等のデザインの考察、⑤放送番組・映画などのプロデューサー・ディレクター、⑥その他、厚生労働大臣が指定する業務(コピーライター、システムコンサルタント、インテリアコーディネーター、公認会計士、弁護士、、一級建築士、弁理士、税理士等)の19業種です。
これらは限定列挙ですので、業務の遂行・時間配分に関する使用者の指示が実質的に困難である業務であるからといって、限定列挙に該当しない限り、専門業務型裁量労働制の適用はありません。
また、名称がこれらの業務に該当すればよいというわけではなく、時間配分の決定、業務遂行手段に関する決定を労働者に委ねる必要があることが客観的に認められなければなりません。
そのため、専門業務型裁量労働制は、その該当性判断が困難な場合が多いのも事実です。
また、詳細は割愛しますが、健康・福祉確保措置、苦情処理手続等、労使協定の締結についても慎重を期すべき点が存します。
それでも専門業務型裁量労働制は前述したメリットがあるために、労働者及び使用者双方にとって魅力的な制度といえます。
専門業務型裁量労働制の導入について検討している等、右制度について何か少しでもご不明な点等ございましたら、弊所に気軽にご相談頂ければと思います。