弁護士 金田正敏
1 はじめに
各企業において、就業規則や各種手当などを定める社内規程を定める際、労働者が仕事をしない日を、「休日」、「休暇」、「休業」などと表現していると思われます。これらは、労働者が仕事をしない期間を指すことは共通していますが、法的に違いがあるものでしょうか。
以下では、定義規定があるものはご紹介し、一般的な用法などと併せて、趣旨などを確認していきます。
2 「休日」とは
「休日」とは、労働契約上、労働者に労働の義務がない日のことです。また、「休日」には、「法定休日」と「所定休日」の2種類があると考えられています。
まず「法定休日」とは、労基法35条(第1項「使用者は、労働者に対して毎週少なくとも一回の休日を与えなければならない」第2項「前項の規定は四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない」)に基づくものです。
他方、「所定休日」とは、法定休日以外に企業等が労働者に対して与える休日のことです。法定休日と所定休日では、休日出勤の割増賃金にも差が出てくるので注意が必要です。
3 「休暇」とは
「休暇」とは、労働契約上の労働義務があるものの、一定の要件を充足することにより、労働義務が免除されるものです。
「休暇」には、法律で定められた「法定休暇」と、企業が独自に定めた「法定外休暇」(特別休暇)があります。まず、法定休暇の代表的なものに年次有給休暇(労基法39条)があります。そのほかにも、生理休暇(労基法68条)や子の看護休暇(育児・介護休業法第16条の2)、介護休暇(育児介護休業法第16条の5)があります。
「法定外休暇」(特別休暇)とは、主に福利厚生の観点から企業が独自に定めたものであり、慶弔休暇、リフレッシュ休暇などがあります。各企業によっては、事業内容と絡めて「二日酔い休暇」「失恋休暇」など、ユニークな休暇を定めているところもあり興味深いところです。なお、「法定外休暇」(特別休暇)を有給とするか無給とするかは、企業の判断にゆだねられますので、当該休暇の趣旨に従い定めるのがよいでしょう。
4 「休業」とは
「休業」とは、労働者が企業との労働契約を継続したまま業務を行わないこと、より具体的にいうと、労働者には働く意思はあるものの、何らかの事情によって働くことができない状況であり、企業からその義務の免除が与えられている日をさします。
まず、「休業」には、労基法で定める産前・産後休業(法65条)、育児休業(育介法5条、11条)があります。いずれも、労働者側に働くことができない状況があり、労働者からの請求がなければ発生しない権利であるという特徴があります。このように、自己都合による休業の場合には、就業規則等に定めがない限り、無給であるのが原則です。ただし、育児休業給付金のように、加入している雇用保険や健康保険から給付金が支給される場合もあります。
他方、企業の都合により労働者が働けない場合の休業もあります。昨今のコロナ禍に起因するものや、大規模な震災や不況等による業績不振などによるものもあります。会社側の都合による休業の場合には、会社側は平均賃金の60%の休業手当を労働者に支払うことが義務付けられています(労基法第12条3項3号)。
5 「休職」とは
「休職」とは、主に、労働者側の自己都合により、業務遂行が困難または適当でない場合、労働契約を維持しながら労働者の業務を免除すること、または拒否することをいいます。休職制度は法律で定められたものではありませんが、採用している企業が多く見られます。
具体的には、傷病休職、留学などの私的理由による休職、会社の命令によって行う出向休職などの種類があります。
6 おわりに
このように、「休日」「休暇」「休業」「休職」とは、各規程の定め方によって、給与計算などの場面で大きな意味を持ってくるものです。就業規則などを作成する際には、以上のとおりの違いを意識して文言を使用する必要があります。不明点等がありましたら、お気軽に幣所にご相談ください。