弁護士 金紀彦
現在、日本には、多くの韓国国籍者が生活しています。戦前や戦中に朝鮮半島からわたってきた在日韓国人もいますし、戦後、留学やビジネスなどのために韓国から日本に来て移住した人もたくさんいます。各分野における日韓の交流は益々活発になっていくものと思われますので、今後、日本に住む韓国国籍者も増えるものと思います。
そのような韓国国籍者は、日本にはもちろん、韓国においても、親兄弟や親族などがおり、また、両国にわたって財産を有しているケースが多くみられます。そのような韓国国籍者が自分が亡くなった後に、家族や親族の生活を守るために、または、事業を適切な後継者に引き継ぐために、さらには、家族や親族間で無用な争いを生じさせないために、遺言を作成することがあります。
韓国国籍者の場合、遺言ができる能力(例えば、痴呆症の可能性がある場合など)や遺言事項などについては、韓国法が適用されます(法の適用に関する通則法第37条第1項)。
一方、遺言の方式については、日本法上、①遺言を作成した地、②国籍地、③住所地、④常居所地、⑤不動産については不動産所在地のいずれかの地の法律に定める方式であれば、有効な遺言方式として認められます(法の適用に関する通則法第43条第2項、遺言の方式の準拠法に関する法律第2条)。また、韓国法においても、①遺言時または死亡時の国籍地、②遺言時または死亡時の常居所地、③遺言当時の行為地、④不動産については不動産所在地のいずれかの地の法律に定める方式で遺言をすることが認められています(韓国・国際私法第50条第3項)。
日本に居住する韓国国籍者の場合、日本法が認める方式または韓国法が認める方式によって作成することが通常です。いずれの方式で行っても構いませんが、日韓両国の遺言の方式については、共通点が多いものの、違う点も存在します。どちらかの法律が認める方法であれば、有効性には問題がありませんが、日本法では存在しないが、韓国法で認められた方式で行う場合にきちんとした成立要件を備えるなど、後で問題にならないように十分に注意することが必要です。
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