外国法事務弁護士(原資格国:大韓民国) 鄭源一
映画やドラマ、漫画などのコンテンツを著作権者に無断でアップロードした違法コンテンツサイトのリンク情報を掲載して、ユーザーに違法コンテンツを利用させるリーチサイトが問題になっています。
この点、韓国の裁判所は、2015年、違法コンテンツサイトのリーチサイトについて、公衆送信権の侵害や侵害ほう助にあたらないので、処罰できないという判決を下しました。その理由は、リンク情報を掲載すること自体は、著作物を転送する行為でも、転送行為を容易にする行為でもないというものでした。
しかしながら、この度、韓国の大法院(日本の最高裁判所に該当)は、違法コンテンツサイトのリンク情報を営利的かつ継続的に掲載して、公衆が侵害コンテンツサイトに容易にアクセスできるようにした場合には、公衆送信権侵害のほう助行為に該当するとしました(大法院2021.9.9宣告 2017ト19025 全員合議体判決)。
本件についての下級審においては、リンク情報は著作物の位置情報と経路を示すものに過ぎないので、公衆送信行為自体を容易にするものではないとして、従前の判例に沿って無罪を宣告しました。これに対し、大法院は、リンク情報の提供がなければ違法コンテンツサイトを発見できなかった公衆まで違法コンテンツサイトにアクセスできるようになるので、このことは、違法コンテンツの転送を容易にし、著作権侵害が強化および増大することに該当するとして、従前の判例を変更したものです。
この度の大法院の判決については、法律の解釈範囲を超えた無理な判決であるとの批判もあります。しかしながら、違法コンテンツサイト(いわゆる海賊版コンテンツサイト)拡大の主な原因の一つになっているリーチサイト運営者に対する処罰を可能にしたという点で、著作権者の立場では歓迎すべき判決です。
今後は、韓国でも人気の高い日本の漫画、アニメ、映画などの著作権者が、韓国において、違法コンテンツサイトのリーチサイト運営者に対し、法的対応を行うことが可能となります。
なお、日本においては、2020年の著作権法改正によって、リーチサイト規制がなされています(著作権法第113条第2項乃至第4項、第119条第2項第4号・第5号、第120条の2第3号等)。
このような案件について、ご相談および実際の対応が必要な場合には、弊所までご連絡下さい。